今回、「何者」という映画を見たのでレビューをしてみました。
「何者」のあらすじ
舞台の夢をあきらめ、就職活動に奔走する大学生の葛藤や友情をリアルに描いた作品です。就活という同じ目標をもった5人の22歳の男女が、情報を共有しあい、助け合っていきますが、一人の就職がきまった途端、仲間のパワーバランスが微妙に崩れていき、それぞれの本音があぶりだされていきます。
大企業、中小企業という企業の大きさだけでなく、自分と企業のマッチングを考えていく過程で自分が何を大切にし何を目指していたのかという「何者」かを問いかけていくことになります。
企業に入れば特別な「何者」になれるのか、自分は「何者」になりたいのか。片思い、ロック、大学院生、留学という今時でもあり普遍であるリアルな若者事情を描きながら、若者の本質的な成長をテーマとしています。面接の場面で1分間の自己紹介が映し出されますが、前半と最後の場面の主人公の大きな変化や面接官の表情に、観客も自分の就活体験を思い出し、苦さや真剣さという青春を再び追体験する効果があります。
また、面接のハラハラする場面で上司と部下という今のビジネスシーンを投影しながら、どちらのポジションも客観的に考え、人が人を撰ぶということの意味や、観客自身が「何者」かという問いをつきつける作品です。
「何者」の出演者について
主人公の佐藤健さんの表情が素敵です。
イケメンなのはもちろんですが、スマホを片手に、片思いの相手をそっと見る姿に、胸がキュンとします。一緒に暮らす菅田将暉君の対照的なかっこよさも好きです。
ハードでオープンに弱みを見せ、就活に不利なキャラなようで、はやく、内定をもらってしまいます。ちゃらちゃらしているようで意外に、地道で自分のものさしで判断する身の程をわきまえたしっかりした若者なのかなと思いました。
菅田さん演じる光太郎がタクシーで「どうしてお前が内定とれないのか、俺にはわからない。」と、つぶやく場面では、純粋な友情と嫉妬とが交錯します。
そのときの佐藤さんの表情がなんともいえません。佐藤さんは、アクションからシリアス、コメディまで幅広い俳優さんですが、天才的なうまさをもっているなあと感心します。容姿が美しいだけでなく、心情表現が本当に上手です。
有村架純さんと二階堂ふみさんという地味女子と派手女子の対比も、美しいです。一見、何でもできる二階堂さん演じる女性が、佐藤さん演じる拓人に詰め寄り、拓人のSNSの裏側を暴露するシーンは、迫力があります。
最後の面接の場面で、佐藤さんがつまりながらも自分の言葉で語っているところでは、「就活を通してたくましくなったね。何も無駄はないよ。」と励ましてあげたくなります。
映画の見所は?
この映画には、岡田将生さんも登場します。
二階堂ふみさん演じる女性と、同棲している大学生です。独自の思想と世界観をもった学生として描かれ、眼鏡をかけ、冷静に世間を批判していた彼の変化もみどころです。
佐藤健さん、菅田将暉さん、岡田将生さんという主役級の男性俳優がそろっています。それぞれの個性を丁寧に演じておられます。また、就活で揺れ動く心理を拓人の描く脚本として、演劇で表現しているシーンが交差するところは、現実と回想が入り交じった不思議な感覚になります。
加えて、二枚目俳優の佐藤健さんが、舞台でみせるアグレッシブな一面も意外性があり、素敵です。原作は直木賞を受賞されていますが、ところどころ原作とは違う場面があり、その違いを楽しむこともできます。
たとえば、ちょっとした食べ物の違いとか、ラインと討論というコミュニケーションツールの違いとかです。原作発表時から4年後の映画になりますが、若干時代が進み流行も違うのかなと、いろいろ分析できて楽しいです。
片思いの彼女から、優しい承認の言葉を得て、勇気をもって再び就職活動へと挑む主人公の姿には、流行ではない不易を観ることができ、大人も若者も男性も女性も何かを感じる映画です。
主人公の拓人の先輩の大学院生として、山田孝之さんも出演しています。アルバイト先での何気ない会話や、時にはぐさっとくる本質を射貫くような発言に、主人公の内面が大きく変化します。
山田さんのひげもなかなかかっこよく、しっかりとした演技で脇をしっかり固めています。拓人が先輩のアパートでさっと隠していた物の正体が、最後にあかされることにもなり、伏線がきちんと敷かれています。
映画の主題歌について
主題歌は、中田ヤスタカさんが書き下ろした楽曲に、米津玄師さんが作詞とボーカルで参加しています。就活にもがき苦しみながらも「何者」かになろうとしている若者のリアルな等身大の姿を、米津玄師さんが見事に歌い上げます。
映画の中の音楽も中田ヤスタカさんが手がけています。二人の世界観に共鳴する映画監督の三浦大輔さんの熱望によって実現したコラボです。三浦監督は、「愛の渦」などで数々の賞も受賞されておられ、「何者」の後には「娼年」などの話題作のメガホンもとっておられます。
まとめ
いかがでしたか?
映画「何者」は見ていて引き込まれる素晴らしい映画ですので、是非一度見てはいかがでしょうか?